1月12日、初めて訪れた白百合女子大学は調布にあり、そのキャンパスはもともと津村順天堂の漢方の材料となる植物園で、その植栽はとても興味深い。
シンポジウムは三部構成ではじまった。参加者は80名となり、想定外の人数に主催者も我々も驚いた。どうやらシンポジウムのポスターやチラシがいろんな人を呼び寄せてくれたようだ。
第一部「5月13日事件の報告」では、最初にNHKBSのニュース番組が上映された(NHKより録画を提供してもらえるように二村先生が交渉した)。これによってニューカレドニアの概要と暴動の背景がわかりやすく紹介された。
次に、増田さんの報告は、暴動の背景にあるニューカレドニアの歴史や、暴動によってどのような経済的打撃をうけているか、フランスにとってのニューカレドニアの価値など、緻密な数字とともに、さすが元外交官の豊かな情報にあふれたものであった。
そのあと、ニューカレドニア大学から参加したナターシャ・ストレンペック先生が暴動を目の当たりにした当事者の体験を報告した。
第二部「ニューカレドニアの移民たち」では、まず、ストレンペック先生が戦前の仏領ニューカレドニアの日本人移民の歴史について報告した。
次は私の番で、今とりかかっている研究の主題から、オーストラリアの強制収容所に戦時抑留された日本人が、家族に宛ててフランス語で書いた手紙を紹介した。今回は仏文関係者が多いことがわかっていたので、あえて日本人の書いたフランス語(ジャパニーズ・フレンチ)の手紙を見てもらい、その言い回しや表現の意味に関する自分の疑問を投げかけた。会場には東大仏文の名誉教授もおられ、すぐに回答をいただけたのは幸運であった。それはまた、この手紙の翻訳を日仏バイリンガルのYさんに頼んだ時に、彼女が「どう訳していいのかわからない」と言ったことを思い起こさせた。
最後に、二村先生が、仏領ニューカレドニアのベトナムからの契約苦力について報告した。初めて知る内容でとても興味深かった。
第三部「両国における教育の連携」は、白百合女子大学とニューカレドニア大学が実践してきた学生たちのオンライン教育・交流についての報告であった。双方の大学から、担当する先生が実例をあげて説明をした。スクリーンに投影された参加学生たちの生き生きした表情が印象に残ったが、この試みもこれからどうなるのかわからない。
聞くところによると、ニューカレドニア大学があるヌーヴィルには独立派のバリケードを超えないとたどりつけない。大学へのバスは運行が不定期、バス代も値上がりした。学生たちの退学が増え、裕福であれば海外の大学に移籍し、そうでない場合は退学するなど格差は広がる。大切な学びの機会を失う若者が不憫である。
シンポジウムが終わったときにはすでに予定時刻をずいぶんすぎていた。2日に分ければよかったという声もあがった。終了後の懇親会(打ち上げ)でもまた興味深い助言をたくさんいただいた。フランス語をきちんと読み解くことでみえてくるいろんな事実がとても面白い。尽力された二村先生、白百合女子大学の辻川先生はじめ運営に関わった先生方、スタッフのみなさんには有意義な時間を過ごせたことに感謝するばかりである。終了後にコメント、メールで資料を送ってくださった諸先生にも感謝したい。
白百合女子大学HPからシンポジウムの報告
https://www.shirayuri.ac.jp/news/2024/u2nkfe0000001i1d.html