カウラで開催された、第二次世界大戦時、オーストラリアにおける民間人抑留に着いてのシンポジウムに参加して帰国した。クイーンズランド大学の永田由利子さんを中心に、ANUの田村恵子さん、 シドニー在住の金森マユさん、エディス・コワン大学のローナ・カイノさんという四人の女性によるニッケイ・オーストラリアという団体がカウラ市と企画した。一番の目的民間人抑留者が日本人墓地に埋葬されていることを銘板に刻んで正式に設置することで、それにともないシンポジウムとアートプログラムが企画された。私は2005年からおつきあいがある永田さんから、拙著「マブイの往来」をベースにした展覧会をしないかと声をかけてもらったのがきっかけで参加した。
私に声がかったことで、もともとニッケイ・オーストラリアがあまり意識していなかったニューカレドニアの存在が大きくなった。それにともない、当初は予定されていなかった仏語訳が銘板に加わった。埋葬されている民間人のなかでニューカレドニアから来た日本人の数は相当な比率を占めているのだから自然な流れだろう。仏語圏の人には英語を理解できない人が多いし、またその逆もそうなので、それぞれの言語で明記するのは大切なことだ。なお、正式な埋没者リストはこれからきちんと作成したいと思う。
永田さん、田村さんが中心になって彼女たちのネットワークをフル稼働して準備したシンポジウムに登壇したのは、日本人だけではなく、ドイツ人、イタリア人、インドネシア人(政治犯収容)に関する抑留者の専門家で、そこにくわえ、元抑留者、遺族、さらにキャンプサイトのある地域から郷土史研究家(収容所に関する博物館の運営者)、アーティストが加わった。単にアカデミックが集うのではないユニークなものになった。残念だったのは地元市民の参加が少なかったことだろう。
同時に金森さんが企画した3つのアートプログラムが開催された。
個々の内容は随時書いていきたいが、まずは以下のとおりのスケジュールであったことを報告したい。
3月7日(木)
カウラ日本庭園内ギャラリー
①17:00 津田睦美写真展「EVIDENCE」オープニング
カウラ元軍事会館ホール
②19:00 ANU名誉教授、Bill Gammage氏の記念講演と食事会
3月8日(金)シビック・センター
①開会の挨拶 カウラ市長、田村恵子
②第1セッション
基調講演:永田由利子「抑留者の遺産-生活の損失とコミュニティの破壊」
③元抑留者紹介
④第1セッション続き
基調講演:クラウス・ニューマン「第二次世界大戦における民間抑留と歴史的審判」
⑤第2セッション ヘルガ&ピーター・ジルシック、イルマ・オブライエン、マリー=ジョゼ・ミッシェル
⑦第3セッション:ニューカレドニア イスメット・クルトヴィッチ、チャド・ダントン、ロエナ・ウォード
⑧第4セッション:収容所のあった地域の博物館・郷土史家 ルーリン・ニー(タツラ強制収容所)、ローズマリー・ガウワ(ラヴデー強制収容所)、デビッド・ヒューストン(ヘイ強制収容所)
進行:ジェナ・プライス
⑨ジュマーディによる影絵パフォーマンス「ガムランンマン」+ボーカルと演奏:リア・ソマージオ、他
3月8日(金)シビック・センター
①第5セッション
ジャン・リンガー基調講演「カウラにおけるインドネシアの政治犯の強制収容」
アーティストによるパネルディスカッション
金森マユ、ジュマーディ、津田睦美
②第6セッション ヘッセ・シルケ、ララ・パロンボ
③第7セッション ミア・スピチカ、シモン・アルコルソ、クリスティン・デュハースト&クレア・ケネディ&サルバトーレ・ラゴネジ
④追加セッション:強制収容・強制労働体験者とその遺族の戦後(第6セッションに欠席者が出たため)
ジュリー・ムラカミ、ジョー、ヘルガ・ジルシック、マリー=ジョゼ・ミッシェル
⑤第8セッション:クリエイティヴ・ライター(小説家)によるパネルディスカッション
コリー・テイラー、ソフィ・コンスタブル、長井志保
3月9日(土)日本人戦争墓地
①除幕式
献花 オーストラリア兵墓地
献花と天台宗による遺族のための法要 日本人墓地
献花 インドネシア墓地
③セレモニアル・パフォーマンス
アーティスト:ウエイゼン・ホー、アラン・シャーチャー、佐野シゲキ・カウラの若者