チバウ文化センターの元館長エマニュエル・カザレルが、ニューカレドニアのカナック族のアート展を準備するためにヌメアからパリ発ったのは3年も前のことだ。いよいよ10月14日、彼がコミッショナーを務めるその展覧会がパリのケ・ブランリーで開会する。ヨーロッパ各地(オーストリア、スイス、フランス、ドイツ、イタリア)とニューカレドニアにあるカナック・アートの公的コレクションを再検討し、約300点を選び出しているという。収蔵先がヨーロッパであることから、18世紀に宗教関係、軍人、商人、探検家などがニューカレドニアにやってきて、どうカナック世界に出会ったかが見えてくる仕掛けなのだろう。かつてフランスの流刑植民地であったニューカレドニアは、数年後に独立をするか否かを決める国民投票を控えている。フランス人がこの世の果てとよぶ島の先住民族のアートを、当時のヨーロッパ人はどう見ていたのか、そして現在のヨーロッパ人はあらたにどう見るのか。その視線に対して、どうカナック・アートは語るのだろう。
私の手許にも招待状が届いた。エマニュエルは私にニューカレドニアへの扉を開いてくれた旧友である。本来なら開会式に飛んで行きたいところだ。残念ながら仕事があるから不可能だが、友人として、彼の展覧会が成功することを心から祈りたい。
この展覧会は来年春にはエマニュエルの古巣、チバウ文化センターに巡回する。しかし、私はパリで見たい。パリでどう見えるか、どう見せるか、どうパリの人は見るか、それがとても気になってしかたない。
エマニュエルの父親はカナック人、母親はパリ生まれのフランス人である。彼が育った環境もまたこの展覧会に独自の視点を加えていることだろう。パリを訪れる予定のある方は是非お見逃しなく。たぶん100年に一度くらいの貴重な展覧会である。
http://www.quaibranly.fr/fr/programmation/expositions/prochainement/kanak-lart-est-une-parole.html
同日、ジュード・ポーム美術館(パリ)では、ヴィラ九条山(京都)元滞在アーティストであるナターシャ・ニジックという若手映像作家による、『フクシマ』をテーマにした展覧会がオープンする。そこにも是非お出かけ願いたい。