10月27日土曜日、ニューカレドニアの日本人慰霊碑の制作を請け負ってもらっているST 社の埼玉にある工場まで、できあがった慰霊碑の見学に行ってきた。初めての東武東上線、40分乗って降りると、改札でST社のMさんが待っていてくださる。
駅からさらにタクシーに乗り15分、すぐに銘板のとりつけにかかっている作業場に連れていってもらった。きれいに仕上がった銘板は、ひとつずつ丁寧に微調整をくわえながら本体にねじで留められていく。
工場のすみに穴のあいた金属板が数枚置いてあったので、これも部品なのかと聞いてみると、現場で組み立て、設置する人が少しでもわかりやすく作業できるように用意された、ねじの位置を決めるために作成したものだと言う。
他にも、たとえば、なにかの間違い?で子供が慰霊碑に登ったときに、ステンレスの角で怪我をしないように何度もヤスリをかけたり、予備のねじを銘板の裏にいれておいてあるなど、心細やかな配慮に頭が下がる思いがした。この日本人らしい心くばりがうまく現場に伝わることを祈りたい。
大切に取り扱われる慰霊碑を見ていると、マリジョーの言うように、「慰霊碑」はつくづく”美しい”プロジェクトだと思う。発案から設置まで、多くの人の協力によってできあがった分だけ意味深いものになっている。
銘板の取り付けが終わると、ニッケルの表面が丁寧に拭かれ、梱包作業に入った。ラップ、さらにエアキャップで巻き終わった頃に私は失礼した。その後は毛布でまかれて木箱に入って、横浜まで運ばれ、そこから鉱石運搬船でニューカレドニアに向かい、11月半ばに到着する予定だ。ニューカレドニアで梱包が解かれたときに、どんなふうに皆がこの慰霊碑を見ることになるのだろう。あの重苦しい暗い墓地に、白金(ニッケル)はどんな輝きを放つのだろう。