5夜連続のTBS開局60周年記念特別番組を(全部ではないが)見た。アメリカに移民した平松一家の戦前戦後を追った橋田壽賀子脚本の大河ドラマで、草薙剛と仲間由紀恵が主演である。私がいいと思ったキャスティングは、泉ピン子、松山ケンイチ、さち役の川島海荷だった。
本作のように、ひとつだけの家族を描くというのは、移民たちの人生を画一化しているようで無理がある。だから、いくつかの家族を同時進行で追っていくような、たとえば、クロード・ルルーシュの「愛と哀しみのボレロ」や、私の大好きなロバート・アルトマンの「ショートカット」、そんなドラマの構成で見てみたいと思った。
収容所にいたはずの、白人(アメリカ人)やその他の外国人と結婚した日本人の家族、収容されなかった人、生きる気力を失った高齢者、交換船で先に送還されて帰国した領事館や企業の駐在社員、そういういろんな立場の人が雑多に暮らすことを余儀なくされた状況がもっと見えればよかったのではないか。それに、収容所内での娯楽(スポーツや演芸会)や、出身地ごとのコミュニティ、冠婚葬祭、米軍の監視とのやりとりなど、収容所における日常生活が見えてきても良かったのではないだろうか。
平松家は互いに尊重し合う家族だが、実際には日本から来た日本人である一世とアメリカ社会で生まれ育った二世、つまり親子の間で確執があった人も多かったはずだ。家族のなかで、言葉、宗教、価値観にずれが生じ、戦後、日本に戻るか、残るか、その選択も相当微妙だったはずだ。
日本に送られたふたりの妹、しづとさちの体験は、ニューカレドニア移民の子供たちにも同じようなことがあっただけに、とりわけ生々しく見えた。子供の将来を思って送り出した親に、彼女達が経験した孤独と惨めさがわかるのだろうか。親戚の家で邪魔者あつかいにされ、親には捨てられたと思いながら、無惨に戦争に巻き込まれていくのだ。
言うは易しだが、移民を描く大作が、442部隊の美談で締めくくられたように感じたのは、私だけだろうか。
たまたま現在、東京と横浜で記録映画「442日系部隊」が公開されている。こちらは「東洋宮武が覗いた時代」を撮ったすすぎじゅんいち監督が、元兵士50人に取材をして制作したものだ。
生の言葉から、兵士の心の葛藤がおのずと伝わってくるだろう。彼らの体験、彼らの家族、彼らを取り囲む社会、そういうものがじんわりと見えてきて、それぞれの人がそれぞれの感覚で見られる映画だと期待したい。12月には神戸でも上映されるそうなので見に行こう。